新会社法と職権登記
第146_1号 2006年6月
5月1日から新会社法が施行されました。 予想したとおり5月は新会社の設立ラッシュでした。6月に入ってだいぶ落ち着きましたが、合同会社(LLC)の設立が最近は急に増えてきました。設立費用が安くて済むのと、税務上の扱いは株式会社と基本的に差異がないためであると思われます。合同会社という言葉の響きが世間一般で耳に慣れてくれば、今まであった有限会社みたいな存在になるような気がします。
以下、新会社法と登記官の職権登記の実務ついて説明いたします。
1.登記事項証明書の内容が変わった!
5月1日以降に自分の会社の登記事項証明書を登記所でとると、その内容が勝手に変更されていることに気付きます。これは、新会社法によって登記官が職権で登記事項証明書の内容を変更したことによります。では、どのように変更されたのかを見てみましょう。
2.株式会社の場合
株式会社については、以下の3つの事項が追加されています。基本的に、新会社法で例外規定とされている事項が、登記事項証明書に追加されています。
- ①「当会社の株式については、株券を発行する」
- 新会社法では、株券の不発行を原則としています。これに対して、改正前の商法では株券の発行を原則としていました。したがって、新会社法では例外規定である「株券を発行する」を明示したわけです。
- 株券を不発行とするために、定款を変更してこの文言を削除しようとすると、登記手続きが煩雑で、かなりの費用もかかります。このままでも、株主の要求があるまで株券を発行しなくてもよいため、無理にこの文言を削除することはないでしょう。
- ②「取締役会設置会社」
- 新会社法の下では、譲渡制限会社(株式の譲渡に株主総会の承認が必要な会社)は、取締役会を設置しないのが原則となります。改正前の商法では、取締役会の設置は必須でしたので、新会社法の例外規定として追加されたのです。
- ③「監査役設置会社」
- 譲渡制限会社では、監査役を置かないのが原則です。上記?と同様の理由で、例外規定として追加されたものです。
3.有限会社の場合
- ①公告をする方法「官報に掲載してする」
- 有限会社は、新会社法の下においても決算公告が不要であるのに、この規定が追加されて「なぜ?」と思われるかと思います。しかし、公告は決算公告だけでなく合併等の場合も必要になるのです。したがって、今まで公告の方法を定めていなかった有限会社は、すべてこの文言が追加されます。
- ②出資一口の金額が削除され、発行可能株式数と発行済株式の総数が追加された
- 資本金額を出資一口の金額で割った株数が発行可能株式数と発行済株式数として追加されています。
- ③株式の譲渡制限に関する規定
- 改正前では、有限会社については譲渡制限の規定はありませんでしたが、新会社法では、「株主間の株式の譲渡は自由だが、それ以外の譲渡は当会社の承認を要する」といった項目が追加されています。
アトラス総合事務所