「一般的に社会保険とは政府管掌健康保険(以下「健康保険」)と厚生年金保険をいいます。よく、「社会保険に加入しなければなりませんか?」といった質問を受けます。法律上は強制加入ですが、未加入の事業所が多いことから、このような質問が多いのでしょう。そこで、社会保険の加入と社会保険加入のメリットを簡単に見ていきましょう。
社会保険は、法人であれば代表者が1人であっても加入しなければなりません。個人事業については従業員が常時5人以上の場合に加入しなければなりません。しかし、個人事業の場合、5人以上でも全ての事業が強制加入ではなく、業種によっては任意加入となります。
健康保険は業務上以外でケガをしたり病気に罹ったりしたときに病院で使うことができます。一般的にはケガや病気の場合に病院で健康保険証を提示しますが、健康保険の使い方はそれだけではありません。例えば、病気に罹り働くことができない場合、仕事に就くことができない日につき給付がなされます。この給付を「傷病手当金」といいます。また、出産のために仕事に就くことができない日についても給付がなされます。この給付を「出産手当金」といいます。このように、健康保険にはケガや病気などで仕事ができない期間の所得を保障する役割もあるのです。
国民健康保険は市区町村が管掌していますので、それぞれの自治体によって内容が 異なります。国民健康保険では上記の傷病手当金や出産手当金は任意給付となっており、それらを設けるかどうかは自治体の任意です。今のところ、傷病手当金と出産手当金を支給する自治体はありませんので、それらの給付は健康保険だけのものであるといえます。
「年金」と聞くと、老後の生活資金である年金給付を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、年金には老後の生活保障である老齢厚生年金はもちろん、事故にあって障害が残った場合等に支給される障害厚生年金、加入者が死亡した場合に遺族に支給される遺族厚生年金があります。
厚生年金加入者の受給ができる年金は国民年金と厚生年金となります。つまり、厚生年金に加入していないと、国民年金しか支給されないことになります。これは、障害年金や遺族年金にもあてはまります。厚生年金に加入していないと、障害年金や遺族年金の支給も国民年金からのみ支給されるだけです。厚生年金加入者は、厚生年金からの障害年金や遺族年金も支給されるのです。
会社の社会保険未加入が原因で、受給できる年金が受給できないとなった場合に、未加入の責任を会社が負う可能性も十分に考えられます。事業主の皆さん、社会保険加入を考えてみてはいかがでしょうか。
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