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自己破産

第126_1号 2004年10月

はじめに

平成14年中に自己破産を申し立てした個人は、214,634人(前年比33.8%増)と年々増え続けている傾向にあります。不況の長期化や自己破産の手続きが簡略化されたことなどが影響しているようです。

今回は「もし破産をされたら…」というケースも踏まえて、自己破産について勉強してみたいと思います。

1.破産と免責

「破産=借金がチャラになる」というイメージがありますが、破産とは「財産が無いので、債務(借金)の支払ができません」という状態を裁判所に宣言し、財産があれば債権者に公平に分配する手続です。自己破産とは、債務者本人が破産の申し立てを行うことです。

個人の場合は、破産手続終了後、免責(=債務免除)の申し立てを行い、裁判所が「免責決定」を出すと債務が免除となります。

2.取引先が自己破産をした場合

(1)個人が破産した場合
個人事業者が自己破産を申請すると、債権の回収はほとんど期待できません。現状 破産手続終了後、免責(=債務免除)を裁判所に申し立てれば、9割以上の人に免責が認められています。
(2)法人が破産した場合
法人は破産申請を行うと、解散となり(商法94条5号)、破産手続終了後消滅するので、債権者として責任を追及することはできません。
社長個人が債務の連帯保証人となっていた場合、会社に代わり債務の弁済を行う必要があります。ただ、社長個人も法人と同時に自己破産を申請し、免責を受けた場合は保証人としての返済義務も解消されます。
(3)破産申立と債権回収
得意先が破産申立をしてしまうと、現在の財産状況や他の債権者との兼ね合い等もあって回収は難しいと思われます。
さらに破産申立前6ヶ月以内の回収についても、他の債権者から回収額の返還を求められる可能性も出てきます(破産法72条)。
実際のところ、日々様々な情報を収集して得意先の財政状況を把握し、破産状態になる前に債権額をカットしてでも集中的に回収を行うしか方法はないようです。

3.従業員が自己破産を行った場合

従業員が自己破産を申し立てた場合、従業員自身に日常生活上の不利益は実質的にありません。本人からの報告がない限り、その事実が判明することもほとんどありません。

仮にその事実を把握した場合でも、事業主は社員の自己破産を理由に従業員を解雇することはできません。解雇を行った場合は不当解雇となります。

4.自社が自己破産を行った場合

法人の場合は、先述の通り解散となるので実質的に財産が存在しない場合は、ただちに消滅となります。

自社の従業員については「使用者都合による解雇」となりますので、30日以上の予告期間をおいて解雇するか、解雇予告手当を支払う必要があります(労働法20条1項)。

社長が法人の債務を連帯保証している場合、社長個人の保証人としての責任は残ります。この保証債務を回避するには、残念ながら社長も自己破産を申し立て、裁判所から「免責決定」を受ける以外方法は無いと思われます。


(週刊税務通信No.2843税務研究会参照)
アトラス総合事務所 奥山 充
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