使用貸借
第098_2号 2002年6月
親の土地に子供がマイホームを建てるというのはよくある話です。しかし、その方法の違いで多額の贈与税が課税されることがあります。
1.ふたつのケース
- ① Aさんのケース
- Aさんは親の土地にマイホームを建てさせてもらいました。Aさんはとても親思いで、律儀な性格の人です。いくら親の土地でもただで使わせてもらうのは心苦しいというので、せめて通常の相場の地代だけでも親に支払うことにしました。
- ② Bさんのケース
- Bさんも親の土地にマイホームを建てたのですが、Bさんはどちらかというとチャッカリとした性格なので、親の土地を使わせてもらっているのに当然のようにまったくただですましています。
- ③ 税務上の対応
- 税務署がこれらの事実を知った場合にどんな処分をするでしょうか。
- 親思いのAさんには多額の贈与税を課税し、チャッカリ者のBさんに対しては何のおかまいもなしとなります。
- 税務署は親孝行を否定するのかといいたくなりますが、これが税法の取り扱いなので仕方ありません。
2.賃貸借と使用貸借
- ①賃貸借
- Aさんのように通常の相場の地代を支払った場合は土地の賃貸借となります。
- 建物の所有を目的とする土地の賃貸借は借地借家法という法律の適用を受け、土地を借りている権利すなわち借地権そのものに財産的価値があるのです。
- 通常、赤の他人から土地を借りてそこに自分の名義の建物を建てる場合には契約時に多額の権利金の授受が行われます。この権利金が借地権という財産の対価に相当します。
- Aさんの場合、通常の相場の地代だけ支払って権利金を支払っていません。そこで、借地権という財産を親からただで贈与されたということで贈与税が課税されるのです。
- Aさんが親に対して通常の権利金を支払っていれば、贈与税の課税はありません。
- また、税法で規定された「相当の地代」を支払う場合も借地権の贈与税課税はされません。「相当の地代」は通常の地代より相当高い、いわば権利金込みの地代なのです。
- ②使用貸借
- 一方、Bさんのようにまったくただで土地を使わせてもらう場合を使用貸借といいます。この場合は借地借家法の適用を受けず、土地を借りていることに借地権という財産的価値を認めません。
- 使用貸借は通常、赤の他人同士では行わず親子、夫婦など親族間のように信頼できる人的関係のもとに行われます。
- Bさんの場合、使用貸借ということで、借地権の贈与は認められず、税法上は何のおかまいもないのです。
- なお、使用貸借でも土地の固定資産税の金額以下の授受があっても使用貸借の範囲として認められます。
- 子供が使用している土地の固定資産税ぐらいは子供が自分で負担してもそれで贈与税はかかってきません。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修