最近の税制改正論議で「給与所得控除の見直し縮小」ということが言われています。
給与所得控除とはサラリーマンに対しての国が認めた必要経費のことです。これが縮小されると給与所得者は全員増税となります。この仕組を見てみましょう。
個人事業者は事業収入からその収入を得るためにかかった必要経費を控除することにより事業所得を計算します。
給与所得者にも同様に給与収入から給与を得るために必要な経費を認めています。これが「給与所得控除」です
個人事業者の必要経費は実際にお金を支払った経費であることが必要です。
一方、給与所得者の必要経費である給与所得控除は実際にお金を使っていなくても給与所得者に一律に認められているものです。
給与所得控除は、給与の年収(賞与も含みます)により控除額が決まります。
年 収 (万円) | 給 与 所 得 控 除 |
---|---|
162.5以下 | 65万円 |
162.5超180以下 | 年収×40% |
180超360以下 | 年収×30%+18万円 |
360超660以下 | 年収×20%+54万円 |
660超1,000以下 | 年収×10%+120万円 |
1,000超 | 年収×5%+170万円 |
年収300万円の場合の給与所得控除は300万円×30%+18万円=108万円となります。
年収800万円の場合の給与所得控除は800万円×10%+120万円=200万円となります。
年収1,200万円の場合の給与所得控除は1,200万円×5%+170万円=230万円となります。
このように給与所得者は会社のために自ら何も経費を使わなくても、多額の経費を認められています。
税金計算上、「給与年収からこの給与所得控除を引いて、配偶者控除などの所得控除を控除した金額に税率をかけます」ので、給与所得控除が多ければ多いほど節税になるわけです。逆に給与所得控除額が減れば増税となります。
給与所得控除の代わりに、給与所得者が実際に給与所得を得るために使った実費経費(特定支出)の選択が認められています。
特定支出の内容は、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、単身赴任者の帰宅旅費です。
しかし、特定支出の実際の確定申告での利用者は全国で10人以内となっていて、ほとんど利用されていません。それだけ給与所得控除が有利であるということの証明でしょうか。
改正論議では、給与所得控除を圧縮して実額控除である特定支出の利用を促すようですが、今後の改正論議に注視する必要があります。
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