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会社設立と見せ金

第096_2号 2002年4月

会社の資本金は会社の信用力の一つの目安となるものです。それが見せかけだけのものであれば取引先等の会社の利害関係者にとっては由々しき問題です。

1.会社設立の事前準備

会社を設立する場合には事前に準備することがいろいろとあります。

① 会社設立必要事項の決定
会社の設立は設立登記がされたことにより完了しますが、登記申請にあたり次のような事項を決めなくてはいけません。
  • 会社の名前(商号)、会社の目的
  • 資本金の額、出資者、役員
  • 設立年月日、事業年度
など
② 印鑑、印鑑証明書の準備
  • 会社の実印となる代表取締役の印鑑を調製します。
  • 登記申請に際して添付する出資者、役員となる者の個人の印鑑証明書を必要枚数収集します。
③ 株式(出資金)払込金保管証明書の準備
会社設立必要事項の決定にもとづき「会社の憲法」ともいうべき定款を作成し、公証人の認証を受けます。
払込銀行に株式代金(出資金)に相当する金額と認証を受けた定款を提出して株式(出資)払込金保管証明書を銀行から取得します。
ここまでくればあとは法務局に登記申請をするだけとなります。

2.会社の信用を失う見せ金による設立

見せ金による設立とは形式的には払込がなされていても、実質的には払込がなされていないものです。

具体的には出資者が払込相当額を自己資金でなく個人的な借入で調達し、設立登記が完了した時点で払込金を会社から引き出して、個人的な借入の返済に当ててしまうものです。

その時点で会社には支払能力はまったくないことになります。つまり資本金は見せかけだけのものということです。

これが初めからわかっていれば、このような会社とは誰も取引したいとは思いません。また、会社の事業活動が始まってもすぐに資金ショートするのは目に見えています。

3.見せ金の法的責任、税務的問題

① 法的責任
実質的に払込がなされなかったことにより会社の利害関係者が損害を被った場合、その利害関係者から、出資者に対する払込担保責任および損害賠償責任が追及される可能性があります。
また、払込金が出資者の個人的な借入返済に当てられたことを看過した会社役員の経営責任として損害賠償責任が起こる可能性もあります。
③ 税務的問題
払込金が個人の借入返済に当てるため引き出された場合は、会社の経理処理としては通常その個人に対する貸付金となります。
貸付金には通常取得すべき利率による受取利息を計上しなければなりません。
利息を計上しないと法人税法上、利息分相当の経済的利益の認定利息とされ、相手が役員であれば貸付金自体が否認されて認定賞与とされる可能性があります。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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