不動産所得
第091_2号 2001年11月
個人が所有するアパートや貸家の家賃収入、駐車場の地代収入は所得税法上の不動産所得になります。不動産所得は所得税の課税上、いくつかの特徴的な取扱いをされます。それを次にみていきます。
1.不動産所得の意義
不動産所得は、基本的には土地や建物など不動産の貸付けによる所得をいいます。
しかし不動産の貸付けでも以下のような税務上の扱いとなります。
- 貸間、下宿は不動産所得となりますが、食事付きとなると事業所得または雑所得に区分されます。
- 貸し駐車場は月極めで貸すような場合は不動産所得ですが、時間貸しのような自動車保管預かり業になると事業所得または雑所得となります。
- 個人事業者が従業員のための社宅を提供して、その賃貸料を受取る場合は、不動産所得としないで事業付随収入として事業所得とします。
- 広告のための看板などを土地、家屋の屋上や壁に設置させることにより受取る使用料は不動産所得となりますが、飲食店などの個人事業者が店舗内に他社の広告のポスターなどを設置させることによる収入は事業所得とされます。
不動産そのものの貸付けだけでなく、地上権、地役権や借地権などの不動産の上に存する権利の貸付け、あるいは船舶や航空機の貸付けによる所得も不動産所得となります。ただし、船舶については総トン数20トン未満のものは事業所得または雑所得となります。
また、不動産の上に存する権利の設定に際して一時的に受取る権利金なども不動産所得になりますが、建物所有目的の借地権設定などの対価で、土地の時価の50%を超えるようなものは実質的に土地の譲渡とみなして譲渡所得とされる場合もあります。
2.事業的規模の取扱い
貸家一軒の家賃収入でも、貸しマンションを数棟持っているような場合でも、同じ不動産所得となりますが、事業的規模であるかどうかにより課税上の取扱いが違ってきます。
事業的規模の基準は通常「10部屋5棟」以上とされています。すなわちアパートなどの共同住宅では10部屋以上、独立の貸家などでは5棟以上が事業的規模の不動産所得とされます。
- ①青色事業専従者給与あるいは事業専従者控除
- 青色事業専従者給与あるいは事業専従者控除は事業的規模であることを前提として適用されます。
- ②青色申告特別控除
- 事業的規模の場合は正規の簿記の原則に基づく記帳による55万円の控除額、あるいは貸借対照表の添付による45万円の控除額が適用可能となります。
- 事業的規模以外は記帳状況のいかんによらず10万円の控除額のみです。
- ②資産損失
- アパートなどの建替えの場合の旧家屋の取り壊しによる損失(資産損失)は、事業的規模の場合は全額必要経費になりますが、事業的規模以外の場合は不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます。
- すなわち事業的規模以外の場合には資産損失で不動産所得が赤字になることを認めず、他の所得との損益通算をさせないということです。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修