住宅取得資金の贈与
第090_2号 2001年10月
平成13年から贈与税の基礎控除が60万円から110万円に引き上げられたのにともなって、住宅取得資金の贈与の特例における非課税限度額が300万円から550万円に引き上げられています。また適用要件の一部が緩和されています。
1.住宅取得資金贈与の特例
この特例はたとえば子供夫婦がマイホームを取得するのに親などからの資金援助を受けやすくすることをねらいとしたものです。
通常、親からの資金援助は借入金としなければ贈与として贈与税が課税されます。この特例はこの贈与税を軽減しようとするものです。
「通常の贈与税」と「特例による贈与税」の違いを例示すれば、次のようになります。
- ①贈与金額550万円の場合
- 通常の贈与税額 84.5万円
- 特例による贈与税額 0
- ②贈与金額1000万円の場合
- 通常の贈与税額 260.5万円
- 特例による贈与税額 45万円
- ③贈与金額1000万円の場合
- 通常の贈与税額 260.5万円
- 特例による贈与税額 45万円
- ④贈与金額1500万円の場合
- 通常の贈与税額 505万円
- 特例による贈与税額 105万円
2.適用要件
主な適用要件は次の通りです。
- 父母または祖父母からの贈与であること。
義理の父母等からの贈与は適用ありません。
- 住宅を取得するための金銭であること。
現金贈与であって、土地・建物そのものの贈与は適用ありません。
- 贈与を受ける者のその年分の合計所得金額が1,200万円以下であること。
- 過去にこの特例を受けたことがないこと。
一生に一度の特例です。
- 住宅の床面積が50㎡以上であること。
- 中古住宅の場合は20年以内(耐火建築物である場合は25年以内)に建築されたものであること。
- 過去5年以内に自己または配偶者の所有する家屋に住んだことがないこと。
この要件は要するに過去5年間に持ち家がなかったということですが、今回この要件が少し緩和されました。緩和されたのは次の2つの場合です。
- (イ) 過去5年間に持ち家があっても、贈与を受ける年の翌年12月31日までに売却して買換える場合、あるいは取壊して建替える場合。
- (ロ) 現在の持ち家に一定の増改築をする場合。
これは住宅の取得でなく、現在持ち家はあるが、それに大規模な増改築をするための金銭贈与も認めようというものです。
一定の増改築とは増改築の工事費用が1,000万円以上又は増改築による床面積の増加が50㎡以上であるものです。
- 贈与を受けた翌年の3月15日までに入居すること、または遅滞なく入居する見込みであること。
3.注意すべきポイント
適用要件は概略上記の通りですが、それぞれの要件についてさらに細かい規定がありますので、実際の適用に際しては税務署や税理士などの専門家に相談した方がよいでしょう。
また、この特例により贈与税が0の場合でも贈与税の申告は明細書や添付書類とともに必要になります。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修