改正年金法
第074_2号 2000年6月
はじめに
これから少子高齢化社会を迎えるにあたり、年金財政の危機が叫ばれていますが、その危機を乗り越えるため平成12年4月から改正年金法が実施されます。
主な改正点は次のとおりです。
1.受け取る年金額は減るのか?
- ① 65歳以後の賃金スライド等の凍結
- 今まで受け取る年金は毎年の物価上昇を基準とする物価スライドによるアップと5年ごとの賃金水準を基準とする賃金スライドによるアップとがありました。
今回賃金スライドによるアップが凍結され物価上昇分しか増えないことになりました。(平成12年4月1日実施)
- ② 厚生年金の給付水準の5%適性化
- 厚生年金の年金額は標準報酬の平均額に一定の乗率と加入月数をかけて計算されますが、この一定の乗数が今までより5%引き下げられることになります。(平成12年4月1日実施)
- ③ 特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引き上げ
- 厚生年金は原則として65歳から支給開始となりますが、特別支給として60歳からもらえる場合があります。
- 厚生年金は定額部分と報酬比例部分とから構成されていますが、定額部分の支給開始を段階的に引き上げて比例部分だけのいわゆる部分年金となります。(平成13年度から)
- さらに将来においてこの比例部分も段階的に支給開始時期が引き上げられ、最終的には65歳になるまで年金がもらえなくなることになります。(平成25年度から)
- ④ 60歳代後半の在職老齢年金
- 特別支給の厚生年金は在職していて給料などの収入がある場合には年金額の一部または全部がカットされていました。
- 65歳以後は収入があってもカットされませんでしたが、今回70歳になるまで在職によるカットが行われます。(平成14年4月1日実施)
2.支払う保険料は増えるのか?
- ① 学生の国民年金保険料の納付特例
- 20歳以上の学生について保険料の納付を不要とし、卒業後に追納することを認めるようにしました。(平成12年4月1日実施)
- ② 育児休業期間中の厚生年金保険料の事業主負担の免除
- いままで本人負担分だけが免除されていたのが会社の負担分も免除され全額免除となります。(平成12年4月1日実施)
- ③ 標準報酬等級のワンランクアップ
- いままで9万2千円から59万円までの30等級でしたが、9万8千円から62万円までの30等級に改正されます。(平成12年10月から)
- ④ 総報酬制
- 厚生年金はいままで標準報酬としての月給を基本として保険料や年金額が計算されていましたが、ボーナスなどを含めた年間の総報酬を基本とするしくみに改正されます。(平成15年4月1日実施)
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修