定期借家制度
第072_2号 2000年4月
1.制度の内容
「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」という法律が平成12年3月1日から施行されています。これがいわゆる定期借家権を定めた法律です。定期借家権は次のような特徴を持った借家契約です。
- ①契約で定めた借家期限が来ると、いわゆる「正当事由」なしに必ず契約が終了します。したがって契約が更新することがありません。
- ②期間設定は従来の1年以上20年以下という制限なしに自由に設定できます。
- ③契約期間中の家賃の増減をしない特約を付けることができます。
- ④中途解約は、賃貸床面積が200㎡未満の居住用建物で賃借人側に一定のやむを得ない事情がある場合に限り認められます。家主側からの中途解約権はありません。
2.制度のメリット
定期借家権は従来の借家権に比べて次のようなメリットが考えられます。
- ① 家主側のメリット
- 正当事由なしに契約を終了できるので家主側にとって貸しやすくなります。 従来は正当事由といってもまれにしか認められないのが実情で、いったん借家契約をすると賃借人が自主的に退室しない限り、半永久的に契約が更新されることになっていました。
- 家主側の事情でどうしても退室してもらうには多額の立退料を支払わなくてはなりません。 定期借家権は立退料なしに契約期間終了とともに建物を返してもらえるのです。家主側にとって将来における土地のいろいろな活用を計画することが可能となります。
- ② 賃借人側のメリット
- 家主側で貸しやすくなるということは、それだけ貸家の供給が増えることになりますので、家賃の下落が期待できます。
- また従来は、いったん家を貸すとなかなか返してもらえないということで回転率のよい狭い貸家が多い傾向がありましたが、定期借家として広い貸家の増加も期待でき、賃借人にとっても選択の幅が広がります。
3.従来の借家契約との関係
従来の借家権は今までどおり存続します。また従来の借家権の更新の際に定期借家権に切り替えることはできません。
居住用建物の場合、従来の借家契約を合意解約して、新たに定期借家契約をすることは当分の間できないことになっています。事業用建物の場合は可能です。
4.定期借家権の相続税評価
アパートなどの貸家の敷地である貸家建付地の相続税評価額は次の算式で求められます。
「自用地(更地)の価額 ×(1-借地権割合×借家権割合)」
借家権割合は東京国税局管内では30%とされています。
定期借家権は家主側の権利が強くなった分だけ従来の借家権より評価が低くなるべきと考えられますが、課税当局において今後の定期借家契約の実態を見極めて判断されることになりそうです。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修