アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

個人事業者と消費税

第059_2号 1999年2月

1.納税義務

個人事業者の場合、その年の前々年の課税売上高が3,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。

平成10年分の場合、平成8年分の課税売上高で判定します。課税売上高とは、消費税がかかる売上高のことです。

平成10年分の課税売上高が3,000万円を超えたからといって、消費税を払わなければならないというわけではありません。この場合、平成12年分について消費税の申告をしなければなりませんので、「消費税課税事業者届出書」を早めに提出します。

また同時に平成12年分の消費税について簡易課税が有利かどうかをあらかじめ判断して、簡易課税が有利な場合は「消費税簡易課税制度選択届出書」を11年12月31日までに提出する必要があります。

2. 消費税の経理処理

  1. 消費税の経理方式には、取引対価と消費税を区分する税抜き経理と、取引対価と消費税を区分しない税込み経理とがあります。
    どちらを採用するかはその個人事業者の選択にまかされています。
  2. 原則として税込み、税抜きどちらかの方式を採用した場合、売上、仕入、経費、固定資産の各取引すべて同じ方式で経理しなければなりません。
  3. ただし特例として、売上を税抜きとした場合、仕入、経費、固定資産の  各項目ごとに税込み、税抜きのどちらでも経理できます。

個人事業者の場合、事業所得のほかに不動産所得もあるというように2つ以上の業務を行う場合は、それぞれの業務ごとに税込みか、税抜きかを選択することができます。

ただし、譲渡所得の起因となる資産の譲渡で消費税が課税されるものについては、その資産が業務の用に供されていた事業所得等と同一の経理方式によることになります。

たとえば事業用の車両を売却したような場合に譲渡所得の計算上その売却金額は、事業所得で税抜き経理であれば税抜きによることになります。

3.納付する消費税の処理

① 税込み経理の場合

消費税等納付額は租税公課として費用になります。

いつの費用になるのかというと、原則として申告したときの費用です。すなわち10年分の消費税は申告した11年分の費用です。ただし、10年分で未払計上すれば10年分の費用とすることができます。

消費税の還付金の場合も同様に申告した年の雑収入にするか、未収計上してその年の雑収入にするかということになります。

② 税抜き経理の場合

消費税等納付額は、仮受け消費税等と仮払い消費税等との精算をして差額として算出します。

その納付額または還付額は未払い消費税等または未収消費税等と処理され、費用にも収入にもなりません。

その差益・差損はその年の雑収入・租税公課として処理することになります。この処理は2以上の業務を行う場合は、その業務ごとにそれぞれ行います。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

 無断転用・転載を禁止します。