景気が悪くなって大手の上場企業の倒産が相次ぐ中、海外の投資家や金融機関などから 「日本の企業のディスクロージャーは適正さを欠いている」とよく指摘されました。
ここでディスクロージャーとは、英語で「開示」という意味で、企業が外部に貸借対照表や損益計算書などの決算書を公表して会社の成績を発表することです。言ってみれば会社の通信簿のことです。この通信簿のつけ方が適正さを欠いているのではないかと海外の投資家などが言っているわけです。
では、どうしたらちゃんとなるのでしょうか。そのひとつが「税効果会計」という制度で、来年から制度化される予定です。
A法 | B法 | |
---|---|---|
売 上 | 1,000 | 1,000 |
費用・損失 | 600 | 600 |
税引前利益 | 400 | 400 |
税 金 | 300 | 200 |
当期 利益 | 100 | 200 |
A法の利益が100であるのに対して、B法の利益は倍の200となっています。
これは、売上から差し引かれる費用・損失の中に税務上、損金とならない不良債権の損失額200が入っていることによります。
A法は現行の会計制度による処理で、税金の計算が、税率50%として
で計算されています。
つまり、不良債権損失200は税務上の損金とならないため、損金として差し引かれている税引前利益に加算して税率を掛けることとなります。
B法は、欧米で数十年前から行われている「税効果会計」による処理です。この方法による税金計算は次のとおりです。
税務上は損金とならない不良債権損失も損金とみなして税金計算をするのです。
つまり、税務上の規定にとらわれず、不良債権はもう回収不可能な損失なのだから、それを税金計算上も損失であると仮定して税金の計算をします。
会計制度の違いによって配当や役員賞与の源泉となる当期利益が大きく違ってくるということは大問題です。
会社の利益が、政策で決まる税務の規定次第で、上がったり下がったりすること自体おかしなことで、当然理論上もグローバルスタンダードである「税効果会計」が望ましいことは言うまでもありません。
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