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贈与税の配偶者控除の特例

第056_2号 1998年11月

はじめに

贈与税は、贈与を受けた場合に贈与を受けた人にかかる税金です。
ただし、基礎控除があって、年間60万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。

夫婦間であれば、一定の条件に該当する場合に、配偶者控除として最高2千万円まで無税の贈与が認められ、合わせて2,060万円の贈与が無税となります

2,060万円の財産の贈与であれば、通常なんと835万円もの贈与税がかかります。それがまったく無税となるこの特例にもっと注目して、大いに活用したいものです。

1.適用要件

     
  1. 戸籍上の婚姻期間が20年以上であること。
    内縁関係は除かれます。
  2. 過去にこの配偶者控除を受けていないこと。
    一生に一回しか適用がありません。
  3. 居住用不動産(土地、家屋、借地権など) または居住用不動産を取得するための 金銭の贈与であること。
    別荘等はだめです。
    また、土地家屋等の全体でなく、 部分的に持分贈与することも認められます。
  4. 居住用不動産について、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し 、引き続き居住する見込みであること。
    金銭の場合は同日までに居住用不動産を取得し、同様に居住すること。
  5. その贈与を受けた翌年の3月15日までに一定の書類を添付した贈与税の申告書を税務署に提出すること。
    配偶者控除で贈与税がゼロでも申告しないと 配偶者控除が認められず、一般の贈与扱いで高い贈与税がかかってきますので特に注意が必要です。

2.この特例のメリット

① 相続税対策としてのメリット

夫から妻(あるいは妻から夫)に財産を移転することで、将来の夫(あるいは妻)の相続税が軽減できます。

不動産と金銭と、どちらを贈与したほうが有利かといえば、一般的には不動産を贈与したほうが有利とされています。

贈与税では不動産は路線価などの相続税評価額で評価されます。相続税評価額が時価より低ければ有利となります。相続税評価で、2,060万円でも、時価だとそれ以上の贈与が可能となるからです。金銭は時価も相続税評価もそのままの金額です。

また将来不動産の時価が上昇すると考えれば、やはり金銭より不動産を贈与したほうが相続税対策としては有利となります。

相続税では、生前3年以内の贈与は相続財産に加算されて、相続税がかけ直される取扱いがあります。しかし、この配偶者控除を受けた居住用財産の贈与については、この加算をしなくてよいことになっています。

② 所得税対策としてのメリット

所得税では、居住用の不動産を譲渡した場合に3千万円の特別控除があります。これは自宅を売って住み替えをする場合に譲渡税を軽減するためのものです。

居住用不動産を部分的に贈与して家屋、土地ともに共有持分にしておくと、この3千万円特別控除が2人分の合わせて6千万円使えることになります。

3.その他の留意点

この贈与税の配偶者控除を受ければ贈与税は軽減されますが、不動産の贈与の場合、所有権移転登記のための登記料、不動産取得税、取得後の毎年の固定資産税などの費用がかかることを考慮に入れなければなりません。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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