【生徒♂】
「何やらきな臭い感じがするけれど、その現在では封じられてしまった消費税の還付手法ってどんな方法だったのかな?」
【先 生】
「例えば、平成24年3月31日以前に開始する課税期間の場合だと、『居住用』として賃貸する目的で取得した建物であっても、その課税期間における課税売上割合が95%以上であれば、その建物の取得に際して支払った仮払消費税は、その全額を仮受消費税から控除する事が出来て、その結果、消費税の還付を受けられるケースが多かったの。」
【生徒】
「なるほど。その当時は、居住用賃貸収入といった非課税売上を得る目的で取得した建物であっても、その取得した課税期間における課税売上割合が95%以上であれば、その建物に係る仮払消費税の全額を仮受消費税から控除出来たんだね。」
【先 生】
「ええ。当時はそうだったの。」
【生徒♀】
「でも、建物を取得した課税期間において課税売上高が発生していなかったらどうなりますの?課税売上高が0円って事は、課税売上割合が95%未満となってしまいますものね。」
【先 生】
「確かにそうね。居住用として賃貸する目的の建物を取得した課税期間において、課税売上高が全く発生していなければ、結果的にその建物の取得に際して支払っていた仮払消費税の還付を受ける事は出来ないわ。
【生徒♂】
「還付が受けられないとなると、嬉しくないね。」
【先 生】
「そうなの。そこで例えば、その建物の敷地内に飲み物の自販機を設置したり、駐輪場を設置したりして、課税売上高を発生させる事を考え付いた訳よ。建物を取得した課税期間においてまだ賃貸収入が発生していなければ、その課税期間における課税売上割合は、95%以上になるでしょ?」
【生徒♀】
「なるほど。確かに飲み物の自販機収入や駐輪場の収入は、課税売上になるものね。取得した建物についてまだ居住用賃貸収入が発生していなければ、その課税期間における課税売上高は、自販機収入等の課税売上のみとなるから、課税売上割合は95%以上になって、建物取得に係る仮払消費税の全額について還付を受けられるって訳ね。」
【先 生】
「そういうこと。でもその為には、建物を取得した課税期間について課税事業者になっていないとダメでしょ?」
【生徒♂】
「確かにそうだね。免税事業者だと消費税の申告納付の義務が無い代わりに還付を受ける事が出来ないもんね。」
【先 生】
「そこで、建物を取得する課税期間については、予め課税事業者を選択しておくのよ。そうしておいて建物を取得した課税期間については、消費税の還付を受けるの。」
【生徒♀】
「でも確か、課税事業者を選択すると、その翌期も課税事業者になってしまうのじゃなかったかしら?」
【先 生】
「そのとおりよ。そこで、建物を取得した翌期については、納税額が少なく済むように簡易課税を選択しておくのよ。その結果、建物を取得した課税期間については多額の消費税還付が受けられて、且つ、その翌期は簡易課税により納税額が少なくて済むから、通算では、手元に還付された消費税分の資金が残るって訳。」
【生徒♂】
「なるほど。考えたものだね。」
【先 生】
「しかも、課税事業者を選択した翌々期、つまり、建物を取得した課税期間の翌々期からは、課税事業者の選択を取り止める事が出来るし、しかも、その翌々期以降の課税期間については、基本的には、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超えないでしょ?」
【生徒♀】
「そうか!居住用賃貸の建物であれば、そこから生じる家賃収入は非課税売上高となるから、他に1,000万円を超えるような課税売上高が無ければ、ずっと免税事業者のままになる訳ね。」
【生徒♂】
「つまり、まとめるとこういう事だね。」
1.先ず、居住用賃貸の建物を取得する課税期間について課税事業者を選択しておく。
2.建物を取得した課税期間について、何らかの形で課税売上高を発生させ、課税売上割合を95%以上とし、消費税の還付を受ける。
3.建物を取得した翌期については、簡易課税を選択しておいて、納税額を最少におさえる。
4.建物を取得した翌々期から課税事業者の選択を取り止めて、以後の課税期間を免税事業者とする。
【生徒♀】
「確かにこれだと、還付された消費税分の資金が手元に残るけれど、何だかグレーな感じがしますわね・・・」
【先 生】
「確かにそうね。でもその当時の法律では、違法とは言えなかったの。そこで国としてもこの還付手法を黙って見過ごす訳にはいかなくて、封じ込めを図って来たって訳よ。」
【生徒♂】
「確かに国としては、封じ込めたくなるだろうね。で、それはどんな方法なの?」
【先 生】
「では次回は、調整対象固定資産に係る消費税還付手法の具体的な封じ込め規定について説明するわね。ではまた次回!ばいばい!」