週刊なるほど!消費税

納税義務(法人成り:1)

第240号 2007/10/01

★【先生】

前回まで、個人事業者の納税義務を4回にわたって、また法人の納税義務を

7回にわたって見てきました。

☆【生徒】

 最後は、新設法人は基本的に免税事業者となりますけど、期首資本金の額に

よって納税義務が免除されないことがあるから、注意が必要だ、という話でしたよね。

★【先生】

 実は、消費税の納税義務には、他にもいろいろあるのですが、一般的に事業を

行っている方が関係してきそうな部分にしぼって話をしています。

 今回からは、個人事業者が法人成りをした場合について見ていきましょう。

 早速ですが、下記の場合における、平成16年度、平成17年度、平成18年度、

そして平成19年度の各事業年度について、納税義務がどうなりますか?

・平成16年9月1日に個人事業者として事業を開始した

・平成16年中の課税売上高 : 1,200万円

・平成17年中の課税売上高 : 2,400万円

・平成18年1月1日に資本金300万円で法人成りした

・1期(平成18年1月1日~平成18年12月31日)の課税売上高:2,500万円

・2期(平成19年1月1日~平成19年12月31日)の課税売上高:2,800万円

☆【生徒】

 平成16年9月1日に事業を開始している。平成18年1月1日に法人成りした。

資本金は300万円。事業年度は個人事業者のときと同じ1月1日~12月31日。

あとは・・・

★【先生】

 あとは各事業年度における課税売上高が示されています。

 ☆【生徒】

 ・・・まず平成16年度は、『納税義務 (法人 : 5)』のところでやりま

した!新規に事業を開始した個人事業者の場合には、納税義務はありません!

 平成17年度も、・・・?このパターンは初めてですね・・・

★【先生】

 平成17年度の納税義務の判定も、今までに話してきたことで全て判断ができます

ので、考えてみてください。

☆【生徒】

 ・・・個人事業者の場合、納税義務があるかないかは、2年前の課税売上高が、

1,000万円を超えているかで判断する。平成17年度の2年前は平成15年。平成

15年はまだ事業を開始していないから課税売上高がゼロ。したがって平成17年度

も納税義務はない!

★【先生】

 そうです。

 法人成りした後はどうなりますか?

☆【生徒】

平成18年度は、『納税義務 (法人 : 6)』と『納税義務 (法人:7)』の

ところでやりました!新規に事業を開始した場合の法人については、資本金が

1,000万円に満たない場合には、納税義務はありません。

 ・・・あれ、でも今回の場合には、平成18年の2年前は平成16年・・・平成

18年の納税義務は、平成16年の課税売上高で判定する・・・?平成19年も平成

17年で判定・・・?

★【先生】

個人事業者と法人は、人格を切り離して考えます。個人事業者のときの課税売上

高は関係ありません。

☆【生徒】

 ・・・ということは、平成18年度は納税義務なし!

 ・・・平成19年度も、・・・?このパターンは初めてですが・・・法人の納税

義務は、前々期の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで決まる。この

法人は新設法人だから前々期がない。ということは前々期における課税売上高はゼロ。

次に、前々期がないということは、基準期間がない。消費税には、基準期間がない

法人の納税義務の免除の特例があって、期首資本金が1,000万円以上である場合

には納税義務が免除されない、ということでしたが、今回の法人は資本金が300万円

だから、それにも該当しない。

ということは、平成19年度も納税義務はない!

★【先生】

その通りです。

 この事業者の場合には、個人事業者のままで平成18年、平成19年と事業を続けて

いたとしたら、平成18年、平成19年は、それぞれ平成16年、平成17年の課税

売上高が1,000万円を超えているので、消費税の納税義務が免除されないところでした。

しかし平成18年に法人成りすることにより、平成18年度、平成19年度と、納税

義務の免除を受けることができました。

このように、法人成りをうまく利用することにより、消費税を節税することが可能なのです。

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