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相続税・贈与税の一体化

第332号 2022年1月

1. はじめに

前回の 12 月号では、令和 4 年度税制改正大綱をテーマとし、その中でも少し触れた「相続税・贈与税の一体化」について、今回はもう少し掘り下げて見ていくこととします。

2. 令和 4 年度税制改正大綱でも見送り

令和 3 年度税制改正大綱で検討事項として掲げられたことにより、報道や雑誌等により、「生前贈与がダメになる」「駆け込み贈与」などといった言葉が巷では話題になっていました。

しかし、ふたを開けてみたら、令和 4 年度税制改正大綱でも、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、本格的な検討を進める。」といった検討事項に留まる内容でした。

では、そもそも、相続税と贈与税の仕組みがどうなっているのか、簡単にご紹介します。

3. 相続税の仕組み

相続税は死亡した人(被相続人)の財産を相続により取得した配偶者や子など(相続人)に対して、取得財産の価額に基づきかかる税金です。

平成 27 年分から、基礎控除額が「3,000 万+600万×法定相続人の数」に引き下げられたことにより、従来は相続税の対象者は全体の 4%程度だったのが、直近の令和 2 年分では 8.8%と 2 倍になっています(出所:国税庁)。

4. 贈与税の仕組み

次に、贈与税の仕組みを確認します。

贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金であり、生前贈与による取得財産には贈与税を課すことにより、相続税を補完する機能を有します。

そのため、取得財産に対する税負担は、相続税より贈与税の方が大きく、相続税は取得財産が1,000 万以下は 10%(最低)、6 億を超えると 55%(最高)となり、贈与税(一般贈与)は 200 万以下が 10%(最低)、3,000 万を超えた段階で 55%(最高)の税率となっています。

最後に、贈与税については、暦年課税と相続時精算課税の 2 つがありますのでご紹介します。

5. 暦年課税

1 月から 12 月までの 1 年間にもらった財産合計が基礎控除額(110 万)を超えた場合に超えた部分に贈与税がかかります。つまり、110 万以下なら贈与税はかかりません(申告不要)。

6. 相続時精算課税

相続時精算課税とは、60 歳以上の贈与者から贈与者の推定相続人又は 20 歳以上の孫への贈与について認められる贈与税の課税制度をいいます。

贈与したときは 2,500 万円までは非課税であり、それを超えたとしても 20%の税額となります。

ただし、贈与者の相続発生時には、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算(精算)して相続税を計算することになります。

7. おわりに

今回は税制改正が見送られましたが、近い将来、改正されることが想定されます。方向性としては、暦年課税を廃止し、相続時精算課税のみに一本化する、あるいは、暦年課税を存続させるが、現状の過去 3 年内贈与のみの加算から、諸外国のように過去 10 年内贈与の加算となるのでしょうか。

今後の動向に注目したいと思います。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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