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ふるさと納税

第323_2号 2021年4月

1.はじめに

2008 年から始まったふるさと納税ですが、2015年の税制改正により、住民税の控除限度額が引き上げられるとともに、確定申告が不要な「ワンストップ特例制度」が創設されました。その後、利用者が急激に伸び、2018 年度の寄付総額は約5,100 億円にもなりました。

2019 年6 月の制度改正により、若干、利用者は減少しましたが、コロナ禍による巣ごもり消費などの影響を受け、2020 年度のふるさと納税が過去最高となる自治体が相次いでいます。

2.ふるさと納税とは?

「納税」という言葉がついていますが、実際には、都道府県・市区町村への「寄付」です。一般的に自治体に寄付をした場合、確定申告をすることで、寄付額の一部が所得税と住民税から控除されます。

一方、ふるさと納税は原則として、自己負担額の2 千円を除いた全額が控除対象となります。所得税は寄付した年分の確定申告で還付されますが、住民税は寄付した年の翌年度(6 月以降)の住民税から控除されるため、税額控除の恩恵は後からやってくるというイメージかもしれません。

3.寄付の上限とは?

ふるさと納税によって受けられる控除の上限は、年収や家族構成などによって異なります。ざっくりの目安ですが、独身で給与年収500 万の場合、6 万円が上限となり、独身で給与年収1,000万の場合、17 万円が上限となります。

つまり、高所得者の方のほうが寄付できる上限は高いということになります。

4.返礼品は個人の収入?

前述のように6 万円の寄付をすると、5 万8 千円分が所得税と住民税から控除されるため、自己負担2 千円で6 万円に対する返礼品がもらえます。

仮に、返礼品が1 万8 千円程度とすると、この返礼品は個人の収入になるのでしょうか?

原則として、返礼品を受けたことによる経済的利益は、法人からの贈与により取得するものと考えられるため、個人の「一時所得」に該当します。

ただし、一時所得には50 万円の特別控除額があるため、通常は一時所得がプラスになることはありません。返礼品還元率30%と仮定すると、寄付総額が167 万円以上で一時所得が生じます。

5.2019 年の制度改正

数年前から過度な返礼品競争が続いたため、制度改正が行われ、対象自治体は総務大臣が指定した上で、返礼品の返礼割合を3 割以下とすること、返礼品を地場産品とすることなどが要件とされました。

3 年連続寄付額日本一の泉佐野市など、一部の自治体が一時的に対象から外れましたが、その後、最高裁が「制度から除外したことは違法」とし、除外決定を取り消しました。これを受け、泉佐野市は再度、ふるさと納税の制度対象に復活しました。

6.ワンストップ特例

ふるさと納税の寄付先が5 自治体以内であれば、確定申告が不要な「ワンストップ特例」が利用できます。所定の申請書を寄付した翌年1 月10 日までに寄付した自治体に提出することで、翌年度の住民税から控除を受けることができます。

アトラス総合事務所 税務部門 黒川 洋介
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