アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

知っておきたいこと

第284号 2018年1月

1.はじめに

総合事務所を経営していると様々な事案に接します。「あらかじめ知っていればこんなことにならなかったのに」と言うような事案をご紹介いたします。

2.サブリース契約

サブリース契約とは、不動産会社がオーナーの物件を定額で一括して借上げて、それを転貸して家賃収入を得る契約形態です。オーナーにとっては、空室でも毎月定額の家賃収入が入るメリットがあります。しかしこの契約は、借地借家法の適用があり、オーナーが契約の更新を拒絶するにはオーナーの正当な理由が必要になります。原則として「もうやめた」だけでは拒絶できません。

3.役員の任期

取締役の任期は、譲渡制限会社(株式の譲渡に制限を設けた会社、中小企業はほとんど該当)で定款において定めることにより最長 10 年とすることができます。友人を会社の役員として迎え、任期を7年としたけれども、2年目で仲間別れして取締役を解任しました。友人は、残りの任期である 5 年間の役員報酬相当額を損害賠償の額として求めてきました。任期をはじめからもっと短くしておけばよかったかもしれませんね。

4.養子縁組

結婚して間もなく、新婚の妻を祖父の養子としました。そうすることにより、祖父の相続人が 1人増えるため祖父の相続税対策になるからです。その後、妻との折り合いが悪くなり離婚を考えるようになりましたが、祖父の養子に入っているために縁が切れず、離婚をあきらめました。安易な相続税対策は考えものですね。

5.不動産の共有

「長年住んだ自宅を売却しなくてはならなくなりました」言われ、「どうしたのですか?」と聞くと、「相続で取得した自宅の土地が 3 名の共有となっていて、私は売りたくないのですが、他の2 名がまとまったお金が必要なのです」と言うことです。不動産は、使用者が単独名義で所有したいものですね。

6.配偶者と子と親のいない相続

夫を亡くされた奥様が、「夫の兄と私が相続人になるのですが、相続財産はほぼ自宅マンションしかないので、自宅を売却しなくてはならなくなりました」ということです。生前、夫と兄との仲が悪く、そのこともあって兄が権利を主張してきたようです。もともと兄には遺留分(相続財産の一定割合の取得を補償される制度)がありませんので、夫が生前に「財産はすべて妻に相続させる」という遺言書を公証役場で作成していれば、このようなことにならなかったわけです。

7.株式の所有

株式を友人や従業員に組織人としての意識づけとして持たせることがありますが、原則として本人の同意なしに取り戻せません。安易な株主作りは将来のトラブルの元となりますので注意が必要です。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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