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アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

役員借入金・貸付金

第265号 2016年06月

1.はじめに

同族法人では、株主と役員が同じケースが多いことから、役員からの借入金(役員借入金)や、逆に役員への貸付金(役員貸付金)がある程度自由に行ことができます。

役員借入金は会社の簡便的な資金調達であり、役員貸付金は会社資金の役員への流出を意味します。

2.役員借入金の計上

会社の業績が思わしくなく、運転資金の不足を補うために、役員が会社に個人のお金を入れるのが典型的な役員借入金です。

また、月額80万円の役員報酬の内、50万円を役員へ支払い、残りの30万円を役員がもらわずに会社にプールした場合においても、30万円は役員借入金(未払金で処理することもある)として計上することになります。

3.無利息でOK

一般的には会社が役員からお金を借りても、役員に利息を支払う必要はありません。金銭消費貸借契約書を会社と役員が締結して、利息を役員に支払うことも問題はありません。

4.役員借入金は相続財産に

役員借入金は、役員から見れば会社への貸付金です。役員に相続があった場合には、この会社への貸付金も預金や不動産とともに相続財産となり、相続税の対象となります。

会社にお金があれば役員借入金を返済してもらえばよいのですが、役員借入金が多額となるとそうは簡単には行きません。何か方法がないか考えてみましょう。

5.役員借入金を免除してもらう

役員が会社に貸しているお金に関して「もう返してもらわなくて構わない」とする債権放棄をすると、会社への貸付金は消滅します。

会社にとっては、役員借入金の返済が免除されるため、役員借入金は消滅して、代わりに債務免除益という益金が計上されます。会社に役員借入金に相当する繰越欠損金があれば税金は発生しませんが、なければ税金が発生します。

6.役員報酬を減らして返済

月額80万円の役員報酬を月額30万円に引き下げて、差額の50万円を役員借入金の返済とすれば、役員借入金は次第に少なくなります。

7.資本金に振り替える

DES(Debt Equity Swap)という手法で、役員が有する貸付金を現物出資することにより、役員借入金を資本金に振り替えることができます(債務超過の場合はできないケースがあります)。

8.出資して返済してもらう

役員が会社に出資して、そのお金で会社は役員借入金を返済します。結果的には上記のDESと同じ効果が出ますので、この方法を擬似DESと言います。役員に出資するお金があることが前提となりますが、会社の状態が悪くてDESが実行できない場合の代替手段として使えます。

9.役員の貸付金を贈与する

役員が有する会社への貸付金を子供や配偶者に贈与して、貸付金を子供や配偶者に移行することにより、役員の貸付金を減らします。時間をかけて贈与すれば効果的です。

10.役員貸付金の計上

役員が個人的に会社からお金を借りると、会社では役員貸付金が計上されます。

また、会社の預金を役員が10万円引き出して、会社のために使った分の領収書8万円分を会社の経費として、残金の2万円を会社に戻さないと、この2万円も役員貸付金となります。

11.会社は利息を計上する

役員借入金は無利息で問題ありませんでしたが、役員貸付金は会社で利息を計上しなくてはなりません。認定利息と言われるもので、現在では1.8%の利率で利息を計上することになります。

12.銀行融資で問題に

役員貸付金があると、新たに銀行から融資を受ける際に問題となります。銀行からしてみれば、融資したお金がまた役員へ流れるという懸念があるからです。

しかし、役員にお金がなければ役員貸付金を回収することができません。つまり、決算書に役員貸付金は残り続けてしまいます。何とか役員貸付金を解消する方法を考えてみましょう。

13.役員報酬から回収する

月額80万円の役員報酬の内、30万円を役員に支払い、残りの50万円を役員貸付金の返済とします。こうすることにより年間600万円の役員貸付金が減少します。

また、月額80万円の役員報酬を月額120万円に増額して、増額部分の金額40万円を役員貸付金の返済に充てることも考えられます。

14.個人資産を会社に売却する

役員個人が所有する車両や不動産を会社に売却して、その売却代金を役員貸付金の返済に充てると役員貸付金は減少します。

ただし、不動産を売却すると、役員個人に譲渡所得税、会社には不動産取得税がかかることがあります。

15.役員退職金で返済する

役員退職金を役員貸付金の返済に充てることで、役員貸付金を解消することができます。役員退職金は、「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」の計算式で通常算定することができます。最終の役員報酬が100万円で30年間代表取締役をやっていた場合には、100万円×30年×3倍=9,000万円の役員退職金を支給することができますので、多額の役員貸付金を解消することができます。

役員退職金は、取締役としての地位を退任する実質的な退職の場合のみならず、代表取締役を退任して非常勤の取締役となる「分掌変更」の場合にも支給することができますので、「まだ会社に関わりたい」というオーナーにも支給することができます。

ただし、非常勤の取締役としての役員報酬の額は、代表取締役であった時の役員報酬の額のおおむね2分の1以下であり、かつ非常勤となったのですから、法人の経営上主要な地位にあり続けていないことが条件となります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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