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税金が還付される

第249号 2015年02月

1.はじめに

所得税確定申告の時期となってきました。

確定申告期間は2月16日から3月15日までですが、申告期間前にも関わらず、税務署に行くと確定申告コーナーで申告手続きをしている人がたくさんいます。これらの納税者は所得税の還付申告をしているのです。還付申告は年が明けた1月からすることができます。

所得税の還付については医療費控除や住宅ローン控除、寄付金控除などがメジャーですが、マイナーな還付もありますので、以下紹介いたします。

2.ご近所さん

妻が「ご近所さんから、確定申告をすれば税金がもどるの?」と聞かれたと言います。仕事はベビーシッターで、医療費を10万円以上支払ったとのことです。

まず所得の種類が給与なのか事業なのかを知る必要があります。事業所得であれば当然申告義務があります。給与所得であれば、源泉所得税が給与から引かれているかどうかを知る必要があります。妻がご近所さんに聞いたところ給与であり、源泉所得税は引かれていないとのことでした。給与所得で源泉所得税が引かれていなければ、確定申告しても税金は一銭も還付されません。ご近所さんには医療費控除は旦那さんの申告で行うように妻から伝えてもらいました。

3.サラリーマンの必要経費

個人事業や個人で不動産を運用している場合には、それで得た収入とそのために使った必要経費を差し引いて事業所得や不動産所得を求めます。

サラリーマンでも給与をもらうために使う必要経費があるわけで、それは給与所得控除という名目で国が一律に定めています。

具体的には、給与収入500万円で154万円の給与所得控除、給与収入1,000万円で220万円の給与所得控除、給与収入1,500万円以上は一律に245万円の給与所得控除となります。この給与所得控除を給与収入から差し引くことで給与所得が計算されます。

一方、サラリーマンが仕事をするために実際に使った資格取得費や衣服費、図書費、交際費、研修費、通信費などの金額(特定支出といいます)の年間合計額が、給与所得控除の2分の1の額を超えた場合には、超えた額だけ給与所得を減額する制度があります。つまり、超えた額だけ給与所得控除額が増えるということです。この制度を使えば、給与から源泉徴収された税金を還付することができます。

4.前年の所得税を還付する

個人の事業所得や不動産所得などが赤字で、給与所得などの他の所得と相殺してもなお残る赤字は、純損失として翌年以降3年間繰り越すことができます(純損失の繰越控除)。また、純損失が生じた前年に納税した所得税を還付請求することもできるのです(純損失の繰戻し還付)。

純損失の繰戻し還付をする条件としては、青色申告者で損失が出た前年も青色申告書を提出していることが必要です。

還付金額は、純損失の金額を前年の所得から差し引いて再計算した税額と、前年に申告した税額との差額になります。純損失が出た場合、純損失の繰越控除はよく行われますが、前年の税金を取り戻す繰戻し還付もあることを理解しましょう。

5.退職金でも還付

長年に亘って勤め上げた結果、それにより手にする退職金の税金は優遇されています。勤続30年で2,000万円の退職金をもらっても所得税は152,500円だけです(他に復興特別所得税と住民税がかかります)。

退職金の税金は他の所得と合算されずに、退職金だけに税率を掛ける分離課税ですので、確定申告は不要です。しかし、確定申告をすると所得税が還付されるケースがありますので説明します。

上述の例で、退職金をもらった年において他に所得はなく、無収入の配偶者がいたとします。この場合、退職金を確定申告すれば、所得税が65,500円還付されます。

退職金が支払われるときに所得税が源泉徴収されますが、その際には配偶者控除といった所得控除は考慮されません。したがって、退職金のほかに給与所得があれば、所得控除は給与所得から引かれますが、給与所得がない場合は、退職所得から所得控除が引かれます。すると課税される所得は少なくなり、結果として税額も少なくなり、所得税が還付されるのです。

同様のことは、給与所得から所得控除が引ききれない場合においても起こります。つまり、引ききれない所得控除が退職所得から引かれるため、税額が少なくなるからです。

6.上場株式等の配当

株式相場は堅調ですが、上場株式等を売却して譲渡損が生じることもあります。この場合、源泉徴収ありの特定口座を利用していれば、自動的に受取った上場株式等の配当金と上場株式等の譲渡損が損益通算されます。しかし、源泉徴収ありの特定口座を利用していない場合は、譲渡損を翌年から3年間繰越すために確定申告をするとともに、受取った上場株式等の配当金を分離課税の配当所得として申告しましょう。

上場株式等の配当金は20.315%(復興特別所得税含む)の税率で源泉徴収されていますので、その分が還付されるのです。

7.自宅の売却で譲渡損

自宅を売却して譲渡損が出た時には、次の2つの制度のいずれかに当てはまれば、譲渡損を給与所得などと損益通算することによって、所得税を軽減させることができます。

●自宅を買換えた場合

  • 所有期間が5年を超える自宅を売却
  • 売却の年、その前年・その翌年のいずれかに50平方メートル以上の自宅を購入
  • 購入にあたって借入期間10年以上の住宅ローンを組む

これらの条件を満たせば、自宅の譲渡損を損益通算することができます。

●住宅ローン付きの自宅を売却した場合

  • 所有期間が5年を超える自宅を売却
  • 借入期間10年以上の住宅ローンが付いている自宅を売却
  • 自宅の売却価額が住宅ローン残高を下回っている

これらの条件を満たせば、住宅ローン残高から自宅の売却価額を差し引いた額まで譲渡損を損益通算することができます。

住宅ローン残高より高く自宅が売れた場合には、この制度は適用できません。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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