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マイホームと相続税

第232号 2013年9月

1.はじめに

バブル期には、高級住宅街である田園調布の自宅を相続税の支払いのために泣く泣く手放したとか、庭を売却したというようなことがありました。

バブル崩壊後、地価は下落して、相続税の納税で自宅を手放すようなことはあまり聞かなくなりました。

しかし、相続税法の改正で「相続税が大変だ!」とメディアなどで煽り立てています。今週発行された週刊朝日にも、「マイホーム相続税発生マップ」という記事が載っていました。相続税法の改正で、自宅を売却しないまでも、多額の相続税がマイホームを所有しているだけでかかってくるのでしょうか?検討してみましょう。

2.基礎控除の改正

相続税は、相続財産が基礎控除を超えると申告しなければならない税金です。現在は5,000万円に相続人1人当たり1,000万円をプラスした額が基礎控除となっています。

これが平成27年1月1日以降の相続からは3,000万円に相続人1人当たり600万円をプラスした額が基礎控除となります。

相続人が妻と2人の子のケースで基礎控除を計算すると、現行が5,000万円+1,000万円×3人で8,000万円の基礎控除となります。相続財産が8,000万円を超えなければ、相続税の申告も納税も必要ありません。

しかし、改正されると3,000万円+600万円×3人で4,800万円が基礎控除となり、相続財産が4,800万円を超えると相続税の申告が必要となります。

3.マイホームの建物の相続税評価

建物の相続税評価額は、その建物の固定資産税評価額です。固定資産税評価額とは、市区町村が固定資産税を課税するために基準とする評価額です。

新築建物の固定資産税評価額は、新築額の60%~50%で、その後は評価額が経年とともに減額していきます。新築から10年も経てば新築額の30%くらいになります。つまり、3,000万円で新築した建物も、10年もすれば相続税評価額は900万円くらいになります。

固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書にある固定資産の明細の「価格」欄の金額になります。

4.マイホームの土地の相続税評価

土地の相続税評価額は、路線価が定められている土地については路線価、路線価が定められていない土地については、土地の固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率(1.1倍など)を乗じた金額になります。

東京都ではほとんどの土地が路線価で評価されます。私どもの事務所の裏にある高級住宅街の南平台では路線価が1平方メートルで100万円もします。そこに建つお屋敷の土地が240平方メートルとすると相続税評価額は2億4,000万円となり、その家を必要とする相続人に多額の相続税が課される可能性があります。マイホームを相続で引き継げないのでは大変なことになってしまいますので、税法では特定居住用宅地等の価額の特例という制度により、救済を図っています。

5.土地の評価が8割引

相続した土地が特定居住用宅地等に該当すると、マイホームの土地の相続税評価額は路線価の8割引となります。

先ほどの南平台の土地も、特定居住用宅地等に該当すれば、相続税評価額は2億4,000万円×0.2の4,800万円となり、改正後の妻と子2人の基礎控除4,800万円と同額になり、相続税は発生しないことになります。

次に、マイホームの土地が特定居住用宅地等になるための要件を見ていきましょう。

6.故人が住んでいた家の土地

① 配偶者が土地を相続
配偶者がマイホームの土地を相続すれば、無条件に土地の評価は8割引になります。相続してすぐにその土地を売却しても土地の評価は8割引で変わりません。
② 故人と同居していた親族が土地を相続
同居していた親族が相続税の申告期限までに相続した土地を所有し、かつ引き続き居住している場合に、土地の評価は8割引になります。
③ 故人と同居していない親族が土地を相続
故人に配偶者がいなくて、同居していた親族もいない場合は、過去3年以内に自己または配偶者が所有する家屋に居住したことがない親族が、相続税の申告期限までに相続した土地を所有している場合に、土地の評価は8割引になります。
つまり、独り身の故人のマイホームを賃貸住宅に住んでいた親族が相続するケースです(税務業界では家なき子の相続と言います)。

7.故人と生計を一の親族が住んでいた土地

故人の土地の上に生計を一にする親族が住んでいる場合です。「生計を一にする」とは、財布を同じにして生活していることを言います。

① 配偶者が土地を相続
この土地を配偶者が相続した場合には無条件に土地の評価は8割引になります。
② 故人と生計を一にしていた親族が相続
故人と生計を一にしていた親族が相続税の申告期限までに相続した土地を所有し、かつ引き続き居住している場合に、土地の評価は8割引になります。

8.改正で適用面積が増えます

特定居住用宅地等の適用面積は、現在は240平方メートルですが、平成27年1月1日以降の相続から330平方メートルとなります。つまり、100坪のマイホームの土地までが8割引きの対象になるのです。

9.まとめ

配偶者が相続すれば8割引は何の制限もなく受けられます。また、故人の土地の上の建物に故人と同居していた親族、またはその建物に故人は居住していなくても故人と生計を一にしていた親族が居住していて、それらの親族が相続した場合も8割引となります。そして、故人に配偶者がいなくて、同居していた親族もいなくて、家なき子が相続した場合も8割引きになります。

故人が独り身で住んでいたマイホームの土地で、子供が持ち家暮らしの場合は、土地の相続税評価額が路線価評価の8割引きにならないことになります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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