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消費税の納税を考える

第220_1号 2012年9月

1.はじめに

消費税率が2014年4月から5%が8%に、そして2015年10月から10%に引き上げられます。消費税率が上がったからといって事業者の税負担が増えるということはないのですが、現実としては消費税の納税が大変になると思われます。

2.消費税の増税は消費者が負担する

事業者にとって消費税は売上代金と一緒に預かって、それから仕入代金や事務所家賃などの支払いとともに支払った消費税を引いた残りの額を税務署に納税します。ですから、事業者は消費税を負担することはなく、負担するのは最終消費者になります。

3.それでも納税が大変になる

事業者は預かった消費税の残りを税務署に納めるだけなのですが、消費税の滞納額は所得税や法人税などのすべての税目の滞納額の約30%を占めていて、滞納額のトップに位置しています。

なぜこうなるのかというと、売上代金とともに預かった消費税は、売上代金とともに会社の運転資金として使われ、いざ納税となると、資金繰りに窮するからです。お札に「これは消費税として預かったもの」と書いてありませんので、皆使ってしまうのです。

4.消費税の納税は何回もある

事業者の納める消費税は消費者からの預り金ですので、早期に税金を国庫に入れる必要があることから、年1回の確定申告での納税のほかに、直前の課税期間における確定消費税額に応じて、中間納税の制度が設けられています。確定消費税額が48万円超400万円以下の場合は年1回、400万円超4,800万円以下の場合は年3回、4,800万円超の場合は年11回となります(つまり毎月納税するのです)。

5.毎月納税すれば使わずに済む

消費税を毎月納税すれば、預かった消費税を運転資金として使うこともなく、納税もこまめにできて資金計画もしやすくなります。しかし、毎月中間納税するには消費税額が4,800万円超必要なので、そうはいきません。課税期間の短縮をして消費税の申告を月毎に区切って申告納税することもできますが、手間と煩雑さがあります。

6.現実的な方法

毎月納税すると思って、一定額を消費税の納税に備えて納税準備預金などの別口座にプールしておくのが現実的な対応でしょう。

プールする金額は、毎月作成する月次試算表から計算するか、もしくは過去の消費税納税額の推移から、売上高に一定割合をかけて計算するということが考えられます。

7.納税準備預金

納税準備預金は、1,000万円までの元本が保証される預金保険の対象となっていて、納税目的のために引き出したものであれば、利息にかかる税金が非課税扱いとなります。

消費税率が今の倍になるということは、納税額も今の倍になりますので、計画的な納税準備が必要になります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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