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小規模宅地特例の改正

第192_1号 2010年5月

1.はじめに

平成22年度の税制改正で土地の評価に関する特例の改正がありました。小規模宅地の特例という制度で、被相続人(故人)が所有していた自宅の土地や、被相続人が事業で使っていた土地の相続税評価額を特例により80%引きや50%引きするというものです。

納税者にとってはかなり有利な特例ですが、この改正で適用要件が厳しくなりました(平成22年4月1日以後の相続から)。

2.居住(事業)を相続人が継続しないとダメ

被相続人の土地に、被相続人や生計を一にする親族が居住していた場合に、相続人がその土地を取得して居住を継続すると、その土地の相続税評価額が240平米を上限に80%引きになります。1億円の土地であれば、2千万円の評価になるのです。

そして、改正前は相続人が居住を継続しない場合でも、200平米までの土地の相続税評価額を50%引きにしていましたが、改正によりこの扱いが廃止になり、居住を継続しない場合はこの特例による評価の減額はなくなりました。

東京に住んでいた母親が亡くなって、その自宅の土地を北海道でマイホームを所有している子供が相続しても、改正前は50%引きの特例の適用がありましたが、改正により適用されなくなったということです。

被相続人が所有していた事業用の土地についても、相続人が事業を継続しない場合は、居住用と同様にこの特例の適用はなくなりました。

3.相続人ごとに適用が判断される

被相続人の自宅の土地を一部でも適用要件を満たす相続人が相続すれば、その土地全体の評価が改正前は80%引きになりました。

つまり、亡くなった父親が住んでいた土地を配偶者が5%、残りの95%を遠方に住んでいる息子が相続した場合、特例の適用要件を満たす配偶者が相続した土地のみならず、要件を満たさない息子が相続した土地も含めて相続税評価額が80%引きとなったのです。

しかし、改正後はおばあちゃんが相続した土地のみが80%引きとなり、息子が相続した土地は特例の適用はありません。したがって、遺言書で「自宅の土地を妻と息子へ」などと記載がある場合には、今のうちに書き直すことも考える必要があります。

4.建物の用途別に土地を評価

3階建ての建物で1階と2階を貸事務所、3階を被相続人の自宅として使用していた場合、3階が80%引きの特例の適用要件を満たせば、その建物の敷地全体が他の階の用途に限らず相続税評価額が80%減額されました。

しかし、改正により80%引きの特例の適用を受けるのは、適用要件を満たす3階部分に対応する土地面積だけとなりました。

つまり敷地のうち自宅部分に対応する3分の1が80%引きの特例を受け、1階2階に対応する3分の2は別の評価になるということです。

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