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持株割合の変更

第151_1号 2006年11月

1.はじめに

持株割合の変更に関する問い合わせが、最近増えています。その理由は、特殊支配同族会社の規定によります。業務主宰役員の役員報酬にかかる給与所得控除額を会社の所得に加算するという特殊支配同族会社の適用を回避する方策のひとつとして、持株割合の変更があるからです。

2.持株割合を変更するには?

 特殊支配同族会社の適用を外れるには、業務主宰役員とその特殊関係者の持株割合が90%未満である必要があります。つまり、第3者に総株数の10%超の株式を持ってもらえばよいことになります(単に10%超を持つことが租税回避になるとか、株を持つ人によっては業務主宰役員グループの議決権であるとみなされる規定もあります。

 では、どのような方法で持株比率を変更したらよいのかを見ていきましょう。

3.株式を譲渡する

業務主宰役員が所有する株式を第3者に譲渡する方法です。譲渡する相手方が第3者であれば、1株5万円の株式を5万円で譲渡しても基本的に問題はないでしょう。業務主宰役員が5万円を出資して取得した株式であれば、5万円のものを同額で譲渡したわけですから、譲渡所得も発生しません。またこの場合、相続税法による株価の評価額は、配当還元方式という方法で評価されますので、会社が過去2期において配当をしていなければ、1株2万5,000円で第3者に譲渡しても税務上は問題ありません。この場合、1株5万円の株式を半値で売るわけですから、譲渡損が発生します。しかし、給与所得などとは相殺できません。

4.増資をする

1株5万円の株式を100株発行している会社が、第3者に対して20株を増資して割り当てます。100株を所有していた業務主宰役員の持株割合は、この増資により100%から83%(100株÷120株)に低下します。

このような増資の方法を第3者割り当て増資といいます。しかし、ここで注意をしなければならないのが、第3者に株式を引き受けてもらう場合の1株あたりの払込金額です。もともと1株5万円だからといって、安易に1株5万円で第3者割り当て増資をすると税務上問題になることがあります。税務上の時価を増資前に算定して、その価格で株式代金を払い込んでもらわなければなりません。

5.従業員持株会の活用

株式の譲渡や増資の場合、税務上誰に譲渡したとか、誰が増資を引き受けたかということが問題となりがちです。そのような問題が起こりにくいのが従業員持株会の活用です。従業員持株会を設立して、持株会に業務主宰役員の所有する株式を譲渡するのです。従業員持株会は、安定株主の確保、従業員のモチベーションの高揚などのメリットがあり、運営自体が業務主宰役員から独立していれば税務上問題となることはありません。

アトラス総合事務所では、この従業員持株会の設立・運営をサポートいたします。
相続税対策としても有効ですので、ぜひ活用してみてください。

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