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時間外労働と賃金

第136_2号 2005年08月

1. はじめに

時間外労働に対する賃金が不払いになっていたため、労働基準監督署の指導を受けて過去に遡って支払うことになった事業所があるようです。そのようなことにならないためには、時間外労働に関する制度を正確に理解することが必要です。

2.時間外労働の適法性

労働基準法では1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないことになっています。時間外労働をさせるには、まず、労使間で協定を結び、それを労働基準監督署へ届け出なければなりません。

3.時間外労働の義務付け

協定を届け出ることで、会社が従業員に時間外労働をさせても構わないことになります。時間外労働をさせるようであれば、会社は労働契約等を根拠に従業員に対して時間外に働くことを命令することができます。

4.時間外労働の給与額は

時間外労働の給与は通常の給与額に2割5分以上の率を掛けた額となります。時間外労働が22時から5時までの深夜にあたる場合は5割以上の率を掛けた額となります。1日の労働時間が10時間だとすると、8時間を超えた2時間が時間外労働となり、また、1時間あたりの給与額が1,000円だとすると「1,250円(1,000円×1.25)」が1時間当たりの時間外労働の給与額、「2,500(1,250円×2時間)」が時間外労働分の給与額となります。

5.労働時間の端数処理は

上記4の例では、時間外労働は2時間でしたが、実際は1時間20分だとか2時間36分といったように、半端な時間が発生します。時間外労働時間を算定するときに15分未満を切り捨てたり、30分未満を切り捨てたりしていることがあります。つまり、残業を15分単位、もしくは30分単位でつけるという扱いです。しかし、時間外労働は1分単位で計算しなければならないのです。よって、15分未満、30分未満を切り捨てることはできません。例えば1時間20分の20分を切り捨ててしまうと、20分間の仕事に対する給与が不払いとなってしまいます。こうなると、賃金の全額払いの原則に反し、さらに、時間外割増賃金の不払いとなり、1回で2つの違反を犯すことになってしまいます。新聞で報道されたマクドナルドはこの例です。

6.労働時間の切り捨てができる場合

4.で簡単に時間外労働の賃金額の算出方法を紹介しましたが、時間外労働は1ヶ月に何日も発生しますので、実際には時間外労働に対する賃金は「時間単価×1.25×1ヶ月の時間外労働時間」で算出することになります。こうして算出した1ヶ月の時間外労働時間において30分未満の端数が発生した場合、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げることができます。労働時間を切り捨てることができるのはこの場合のみとなります。

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