アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

生前贈与

第086_2号 2001年6月

平成13年度税制改正で平成13年1月1日以降の贈与について贈与税の基礎控除額が60万円から110万円に引き上げられました。基礎控除額が引き上げられたのは昭和50年から実に25年ぶりのことです。そこで相続税対策としての生前贈与が注目されています。

1.基礎控除額を利用した贈与

贈与税はその年の1月1日から12月31日までにその個人が贈与を受けた財産の課税価格から基礎控除額を控除した残額に税率を適用して算出されます。

つまり基礎控除額以下の贈与であれば贈与税はかかりません。

たとえば現金1000万円を一度に贈与すると贈与税は

(1000万円-110万円)×45%-140万円=260万5千円

と算出されます。

しかし、毎年100万円を10年間贈与するなら各年において基礎控除以下ということで贈与税は0となります。

このように財産を移転して相続財産を減らすことで相続税対策になり、相続人に贈与することで納税資金の準備とすることもできます。

ただし、この生前贈与をするにあたって注意すべきポイントがあります。

<連年贈与に対する注意>

連年贈与とは先ほど述べた毎年100万円を10年間贈与するというような毎年連続して贈与することです。

これに対して贈与税はかからないと言いましたが、不用意なやり方で贈与すると贈与税がかかってくるのです。

最初から1000万円を贈与するつもりで10年間に分割して100万円贈与していくというようなケースでは贈与税がかかってきます。これを「有期定期金」の贈与といいます。

有期定期金はその期間により法定評価割合が定められており、10年であれば40%で評価され定期金の総額1000万円は

1000万円×40%=400万円 の評価額となります。

これに対する贈与税は

(400万円-110万円)×25%-30万円=42万5千円 となります。

2.生前贈与の注意点

この有期定期金の贈与とならないように次のような点に注意する必要があります。

①毎年の贈与額を変える
毎年の贈与額が一定であると最初の時点での計画性を疑われます。毎年そのつど贈与をしたのだということで、今年は90万円、次の年は150万円(この場合贈与税は4万円かかる)というように変化をつける配慮が必要です。
②贈与契約書を作成する
毎年贈与のつど贈与契約書を作成します。贈与の時期についても毎年同じ時期ではなくその月日に変化をつけます。
③贈与税の申告書を提出する
契約書の作成とともに翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出します。贈与税が出る場合はもちろん、基礎控除額以下の場合でも贈与税ゼロの申告書を提出して税務署の受付印が押された控えを保存しておきます。
④4資金の移動は口座を通して行う
資金の移動は贈与する者と贈与を受ける者とのそれぞれの名義の預金口座を通して行い客観的に立証できるものにしておきます。
 
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

 無断転用・転載を禁止します。