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貸倒損失

第085_2号 2001年5月

売上代金等の回収見込みがむずかしい債権、すなわち不良債権は、貸倒損失として損金に落とすことにより、その税金分だけでも回収することができます。

ただし貸倒損失にするためには税法上きびしい要件があります。

1.法律上の貸倒損失

(1)切捨て額 

つぎによる切捨て額は貸倒損失となります。

  • 会社更生法等による更正計画の認可決定
  • 商法の特別精算に係る協定認可又は整理計画の決定
  • 民事再生法の再生計画の認可決定
  • 債権者集会での合理的な基準による協議決定
  • 行政機関又は金融機関等の斡旋による協議契約

(2)書面による免除額

債務者の債務超過が相当期間継続し、弁済不能のため書面で相手先に免除通知をした金額。

ただし、免除通知をしても相手先が弁済能力があると貸倒損失ではなく寄付金等と認定されるので注意が必要です。

2.事実上の貸倒損失

  

債務者の資産状況、支払能力等からみて債権の全額が回収できないことが明らかな場合に、その全額に相当する金額を貸倒損失にすることができます。

この場合に部分的な貸倒れ処理は認められません。担保物がある場合はその処分後でなければ貸倒れ処理できません。

事実上の貸倒れであるかどうかの判断は法人自身が行い、損金経理により意思表示することになります。

3.形式基準による貸倒損失

  

売掛債権については次に該当する場合は備忘価額1円を残して貸倒損失にできます。

売掛債権以外の貸付金などには適用がありません。

  • 継続的取引をしていた債務者につきその資産状況、支払能力等の悪化により取引停止してから一年以上経過した場合
    建築工事の請負代金や不動産取引の譲渡代金などの継続的でない、たまたまの取引については適用がありません。
  • 同一地域の債務者について有する債権の総額がその取り立てのための旅費その他の費用に満たない場合において、支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき。

4.個別評価による貸倒引当金

 

貸倒損失としての判断が難しい場合には、次の要件に該当すればそれぞれに掲げる金額について個別評価による貸倒引当金を計上することにより暫定的な貸倒れ処理ができます。

  • 債務超過の状態が1年以上継続し、事業好転の見通しがないことなどにより、債権の一部につき回収見込みがないとき、その回収見込みがない一部の金額
  • 形式基準による評価
    債権者につき会社更生法等による手続開始等の申立て、あるいは手形交換所の取引停止処分があった場合には、その債権額(担保等により回収が見込まれる部分を除く)の50%相当額
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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