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会計学の話 その3

第077_1号 2000年9月

はじめに

    

よく「在庫が増えると利益が出て、在庫が減ると利益が少なくなる」と言います。また、「在庫を作れば作るほど利益が出る」ということも言われています。これらのことはどのような事を意味しているのか考えてみましょう。

2.在庫の評価

在庫の評価とは 「在庫をいくらで計上するか」 ということです。

仕入在庫を考えた場合、仕入れた単価で売れ残った数だけ計上すれば、在庫の評価は利益に一切影響しません。

売れ残った在庫が多くても少なくても、利益は売れた商品の粗利益の額だけ正確に計上されます。

<設例>
期首在庫商品 5個×@50円=250円
仕入れた商品 10個×@50円=500円
売れた商品 12個×@80円=960円
期末在庫商品 3個(注)
(注)期末在庫商品は次のようにして求められます。
(期首在庫商品)5個+(仕入れた商品)10個-(売れた商品)12個=
(売れ残った商品)3個
損益計算書
売上高 960⑤
売上原価
 期首商品在庫 250①
 当期商品仕入 500②
 期末商品在庫 △150③ 600④
売上総利益(粗利益) 360⑥
(説明)
売上原価④ =①+②-③
売上総利益⑥=⑤-④

期末商品在庫は仕入れた単価50円に売れ残った在庫数3個を乗じた150円で評価されています。粗利益は売れた商品の数12個に商品一個当たりの粗利30円(80円-50円)を乗じた360円と正確に計算されています。

3.在庫の評価が利益に影響する場合

 

設例での期末在庫商品の数を間違えて5個とした場合は次のとおりとなります。

損益計算書
売上高 960
売上原価
 期首商品在庫 250
 当期商品仕入 500
 期末商品在庫 △250⑦ 500⑧
売上総利益(粗利益) 460⑨

期末商品在庫の評価は5個×@50円=250円となります。
正しい在庫評価額150円③より100円(250円⑦-150円③)期末商品在庫が多くなっています。その分粗利益も100円(460円⑨-360円⑥)多くなっています。

これは売上原価の計算の仕組みによるものです。
売上原価はその名のとおり売上げた商品の原価です。
簡単には売れた商品12個×仕入単価50円=600円で正しく計算できます。

しかし、通常は仕入単価がその都度異なり、このような単純計算はできません。

期首からあった在庫「期首商品在庫①」に当期に仕入れた商品「当期商品仕入②」を加えて現にあった商品を計算し、そこから売れずにまだある「期末商品在庫③」を差し引き、つまり「あった商品の原価」-「まだある商品原価」=「売れたであろう商品の原価」として計算します。

ですから、「まだある商品原価」即ち期末商品在庫の評価を間違えると売上原価が違い、利益も違ってくるわけです。

お分かりいただけたでしょうか。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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