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離婚と税金

第068_2号 1999年11月

1. 財産分与の税金

 
① 財産をあげる側に税金がかかる?
通常は夫婦間であっても夫から妻に財産の移転があったような場合には贈与として、贈与税の課税対象となります。しかし、離婚による財産分与は、婚姻期間中に夫婦が共同で形成した財産を精算する性格のものとして,原則として税務上も贈与とは考えません。
分与する財産が現金や預貯金でなく、不動産や有価証券の場合には、財産をもらう側では原則どおり贈与とはされませんが,財産をあげる側に譲渡所得税の課税関係が生じてきます。
財産をあげる相手から代金をもらうわけでもないのに、どうして譲渡なのかと思われるでしょうが、税務上は不動産等を時価で譲渡したものとされます。
② 居住用財産の特別控除の適用は?
たとえば今まで夫婦で同居していた夫名義のマンションを離婚に際して妻に財産分与したような場合、夫側の譲渡所得の計算において居住用財産の3000万円特別控除が適用できます。
注意したいのは不動産の名義変更は離婚の除籍手続きの後に行なうことです。まだ法律上夫婦のときに不動産の名義変更をすると贈与とみなされたり,3000万円特別控除が受けられなくおそれがあります。

2.慰謝料の税金

財産分与としてでなく、慰謝料として現金を受け取った場合にも、それが社会通念上相当なものである限り受け取った側に税金はかかりません。

心身に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金、慰謝料等は所得税法上非課税とされています。

不動産などで支払った場合は財産分与と同様に支払った側に譲渡所得税の問題が生じます。

3.養育費の税金

 

離婚に際して、母が子供を引き取り、父が養育費を送金するというような場合には、受取る養育費は贈与税の課税対象となりません。

扶養義務者から受ける生活費や教育費は贈与税の非課税とされています。ただし、毎月送金する場合はよいのですが、数年分をまとめて送金したりすると贈与税が課税されます。

養育費を送金している父は、たとえ子供と別居していても、生活を一にしていることで子供を扶養親族として扶養控除が受けられます。母にも収入がある場合は、父,母両方の扶養親族にはなれませんので、どちらの扶養親族にするか決める必要があります。

4.寡婦(夫)控除

離婚したとき65歳以上の老年者に該当しない場合、所得税の計算上、所得控除として次の金額の控除が受けられます。

 
① 寡婦控除
夫と離婚し、まだ再婚していない者で扶養親族又は所得金額の合計額が38万円以下の生計を一にする子がある者。
…27万円
寡婦のうち扶養親族である子を有し、かつ所得金額が500万円以下の者の場合
…35万円
② 寡夫控除
妻と離婚しまだ再婚していない者で所得金額の合計額が38万円以下の生計を一にする子がある者で、かつ所得金額が500万円以下の者。
…27万円
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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