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小規模企業共済のすすめ

第046_2号 1997年11月

1.超低金利時代の高利回り商品

証券会社など大手企業のトップの商法違反の不祥事、三洋証券の事実上の倒産など、世の中いやなニュースばかりで、株価は大きく下落し、景気はますます悪くなる傾向を見せています。

景気を良くするためには、金融緩和として金利を下げるのですが、すでにこれ以上は下げられないほどの超低金利となっています。それでいて、銀行などは金融ビッグバンの準備のため自己資本比率を上げるためとかで、企業への貸し付けを渋っているということが言われています。定期預金の利息が0.3%、普通預金が0.1%というように、金利が低い不利な面ばかりを庶民がこうむっている形です。

このような時代に利回りが0.3%どころか、10%、20%、あるいは30%以上の共済制度があるといったら信じてもらえるでしょうか。それが他ならぬここに紹介する小規模企業共済なのです。かの詐欺商法として悪名高きオレンジ共済でも、利回りは6%程度だったのです。

2.制度の特徴

最初にお断りしておきますが、高利回りであることに、うそ偽りはありませんが、元本は月の掛け金最高7万円までで、年84万までの話です。

しかも一定の個人事業者または会社の役員など適用される人は限られています。

<加入資格>

常時使用する従業員の数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主及び会社の役員など

<毎月の掛金>

1,000円~70,000円(500円刻み)加入後増額できます。

掛金は全額所得控除の対象となります。所得税法上「小規模企業共済等掛金控除」として、課税される所得金額から差し引かれるのです。

ここが高利回りになるからくりなのです。課税所得が300万円で所得税の税率は10%、掛金を月2万円かけているとして、年24万円の10%の2万4千円の税金が助かります。所得の高い人であれば、所得税率は20%、30%で計算されるわけです。

たしかに年単位の金額はそれほどたいしたものではありません。しかしこの制度は本来事業主の退職金制度としてのものですので、15年、20年と継続することに意味があります。利回りとしての節税金額を15年あるいは20年のトータルで考えればかなりのものになるでしょう。

また、受け取る共済金も一時金であれば退職所得、分割金であれば公的年金扱いと、これまた、かなり有利な取り扱いとなっています。

この制度は政府が全額出資している中小企業事業団が運営しています。共済金自体の利子も政府が援助していますので、上記に述べた節税分と合わせるとその有利さは莫大なものとなります。こんな有利な制度を利用しないのは、実にもったいない話です。

銀行など金融機関が窓口となっています。加入資格に該当する人は、ぜひ検討してみてください。


税金ワンポイント(税務署への報告制度)

外国為替管理法の改正により、来年4月から200万円を超す外国送金をした又は受けた顧客について、金融機関は税務当局に対してその者の氏名・住所・送金の原因を税務当局に告知する義務が課されることになりました。

なぜこのような事をするかというと、それは税金を逃れる不正な海外送金を税務当局の網に掛けようということからです。

このような税務資料の国税当局に対する提出は、よく税務署から送られてくる外注費・交際費・売上・仕入先等に対する資料箋が代表的なもので、これは外注先・仕入先等の反面調査資料となります。

他には、ゴルフ会員権の名義は全て国税当局に報告され、不動産の登記異動も全て国税当局に報告されています。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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